妊娠と出産
妊娠と出産は女性にとって大事業です。出産を境に体調が良くなる人と、悪くなる人がいます。それは、妊娠と出産が、ヒトの最も大切な骨盤と関わっているからです。
妊娠出産を無事過ごすために
胎児がおなかの中で大きく成長するに従って、骨盤の仙腸関節はゆるんで、胎児が生活できる空間をつくります。しかし、もともと骨盤がゆるい人が、さらにゆるんでしまうと、産道が開いて妊娠が持続できなくなることがあります。それを防ぐのが古来からの知恵である「腹帯」です。
最近は、装着が簡単なコルセットやゴム製のバンドが普及していますが、「胎児がいるスペースを圧迫せずに、支えて、骨盤だけをしめる」という3つの目的を果たすには、サラシが一番うまく調整できるのです。巻き方は妊娠期によって変わりますから、年輩の助産婦さんに知恵を授けていただくか、構造医学を勉強した医療者にご相談下さい。
胎児が重力によって、産道から自然に降りてくる「座位分娩法」が一部の産科や助産院で推進されています。また、陣痛促進剤の使用や、お産婆さん達が恥とした会陰を公然と切る「仰向き分娩」の不合理性など、出産についての見直しが始まっています。これらの問題は、出産を控える女性だけでなく、パートナーとなる男性も是非、心を傾けてください。
出産後母体症候群
近年、出産後の母体のトラブルが増えているようです。腰痛をはじめ、めまいや頭痛、目の痛み、足がフワフワする、疲れやすいなどの神経症状が主で、これは『出産後母体症候群』と呼ばれています。
出産では胎児の出てくる産道が広がるために、おのずと骨盤関節がゆるみます。それがきれいに閉じるには、出産後約7週間を要します。
骨盤の尾骨は脊髄とつながり脳と関連しているので、産後の1〜2ヶ月間を骨盤安定のため安静に過ごせないと神経系を崩してしまうことになります。ですから、出産直後は普通に動いてはいけないのです。特に、2児出産以降は上の子の面倒を親に頼むなどして、産婦は安静に過ごさなくてはいけません。
昔は産前産後に腹帯をしたり、産後の1ヶ月間は安静にして、洗髪や読書も控える慣習があったようです。しかし核家族化や産科指導の不徹底や、妊婦自身が体調不十分で妊娠と出産に臨んだことなどが、出産後母体症候群がふえた理由だと考えられます。
どう対応するか
ゆるく不安定になっている骨盤には、ねじりや強く押す力を絶対に加えてはなりません。微細な力で骨盤の関節面を正しい状態に誘導しなくては診療は成功しません。そして、腹帯をして骨盤の安定をはかる必要があります。