獣の医学⁄人の医学
私たち人間は地球の生き物です。地球には数千万種もの生き物が住んでいますが、今のところ、地球以外の場所で生き物は発見されていません。
それは海水や空気などの地球独特の環境が、「生命の素」になると同時に、太陽の強い熱や紫外線から私たち生き物を守る「バリア」の役をしているからなのです。
大昔、海の成分が濃縮されてアミノ酸がタンパク質や遺伝子になり、細胞になり、海藻や魚類となりました。そして植物が陸に進出して大気に酸素を生むと、両生類が重力に抵抗しながら四足で陸にはいあがります。その後ハ虫類やホ乳類やサルが地上に誕生し、数百万年前、直立二足で歩く奇妙な生物=人間が、生き物の歴史の最後に登場したのです。このように、地球の生き物と地球の自然環境(海水、空気、重力など)は、強い絆で結ばれているのです。
医学は地球の生き物の体の研究を基礎にして、その生き物の病気の治療や予防について研究する学問です。
医学は、大きく2つにわけることができます。
- 1 • 魚から犬や猫、馬や牛からサルまでの動物のための医学
- … いわゆる獣医学
- 2 • ヒトという動物のための医学
- … 一般的に現代医学(西洋医学)をさします
現代西洋医学は、内科や外科、循環器科、消化器科、整形外科や眼科、耳鼻咽喉科、脳神経内科、外科、心療内科など多数の専門科に分かれています。
その他にも歯科医学や柔道整復医学、東洋医学(漢方薬・針灸・指圧)、チベット医学やアーユルヴェーダなど、人類は自らの健康のためにたくさんの医学を創造してきました。
ヒトと獣の医学の違い
今はペットブームです。
もしあなたの家に犬や猫がいて、歩きづらそうにしていたら整形外科に連れていきますか?。犬や猫が病気の場合は、たいてい動物病院に連れていきます。それは犬や猫の体を熟知している獣医でなければ、適切な病気の診断や治療はできないと思うからです。
反対に人が腰痛になった場合は、動物病院へ行かずに整形外科へ行きます。整形外科医は人の体のしくみや特長を熟知していて、科学的に病気の診断や治療をしてくれると思うからです。
四足動物と二足動物
地球上には何百万種という動物がいますが、その多くは四足で地を這う動物です。犬や猫もサルも一瞬二足で歩きますが、ふだんは四足で地を這います。常に二足で体を起こして歩く動物は、唯一ヒトだけです。私たちがふだん見慣れてしまった二足動物のヒトは、実は何百万分の一という動物史上、類をみない存在なのです。
二足動物と四足動物は、背骨の方向や内臓の配置、食べ物や血液の流れまで全く異なります。ヒトが二足で歩けるようになった理由やしくみを解明することは、手が自由になり、大脳が発達したヒトの体の本質を理解することになるので、人の病気を適切に診断、治療する医学にとって避けて通れない重要課題なのです。
ところが
整形外科学を含む現代医学は、二足で歩くという人の本質を解かずに、体内の臓器や細胞のしくみを詳細に調べ、マウスなどの四足の動物実験をパスした新薬を人間の患者に処方してきました。このように四足動物と人の体を一緒に扱っているところをみると、「現代医学は人の体を熟知した学問だ。」と、本当に言えるでしょうか?
今日薬害や医療ミスなどの医療問題が後を絶たないのは、現代医学が人の体の本質を解かずに、人の動物的側面を解いてきたにすぎないからだといえるのではないでしょうか。そうすると、いくら医療の制度や法をかえても、真に人の健康に貢献する医学にならないことになります。「二足で歩く」という人の本質に関わる重要課題を解かなければ、「ヒトのための医学」は完成しないということなのです。