ストレッチ体操の弊害
以前は運動中に水を飲んだり、関節を冷やすことは悪いこととされてきましたが、今日のスポーツ界では「補水・冷却」は良いことになっています。研究が進み、意外な新事実が証明されると、それまでの常識は通用しなくなります。
関節へのダメージ
骨の増殖や癒合が始まります
運動の前後にストレッチは今日の常識ですが、最新の関節や筋肉の研究では、この常識が崩れはじめています。
関節は人為的に強く引き伸ばされると、一時的にルーズになって動きます。しかし、体が関節のルーズな部分を埋める「補修」反応(骨の増殖や癒合)が始まると、関節の動きは徐々に悪くなってきます。
よく指の骨を「パキパキ」鳴らしていると関節が太くなるといいますが、それは本当です。指だけでなく、首の骨を鳴らす人も同様です。
首の関節が太くなる(肥厚する)病気に「脊椎硬化症」「後縦靭帯骨化症」などがありますが、いずれも現代医学で厄介な病気とされています。
関節音がしないまでも、過剰な関節動作の反復は避けた方が良いでしょう。確かにストレッチは気持ちのいい体操ですが、キチキチに伸ばすのではなく、自然に動く範囲にとどめたほうが関節の安定性の面からみても良いと思います。
筋肉へのダメージ
筋肉を強く伸ばすと、筋繊維や筋を包む膜は微小に切れて傷つきます。傷ついた繊維や膜は、破れた布を繋ぐ「ぬいしろ」のように重ね合せて「補修」されるので、筋は元よりも少し短くなります。それを筋が硬くなったと思ってストレッチを繰り返していると、筋繊維はさらに短くなって弾力性を失います。運動前は筋をあまり使っていないので、縮む傾向にあるのは当然です。それを準備運動として「縮んだから伸ばす」というのでは、改善されないどころか、回を重ねるに従って潜在的に体を硬くすることになるのです。
スポーツの現役期間は、毎日頻繁にストレッチをするので、「補修」される間がなく、柔軟性が維持されます。しかし、現役から離れると体は硬くなります。それはストレッチをしなくなったからではなく、壊した筋肉や関節の補修が始まるからです。
筋肉の縮む原因
- 疲労性 … 使いすぎあるいは、関節のずれが筋肉を絶えず緊張させる疲労性萎縮
- 廃用性 … 筋肉は使わないと縮みます
- 過剰なストレッチ
ウォームアップは歩行で
ストレッチは「牽引」です。頻繁にして良いものではありません。また、関節の動きには個人差がありますが、潤滑不全になっている関節は放置できません。
ストレッチにかえて、運動の前後には歩行をおすすめします。歩行は全身の関節と筋肉を傷つけることなくバランス良く使うので、準備運動には最適です。そして運動の後は、負担をかけた筋肉や関節を氷のうでアイシングすることをおすすめします。
病院では「スポーツ医学科」という科が新設されています。それは近年のスポーツブームで、スポーツ特有の障害を起こす人が増え必要になったからです。スポーツは身体のバランスを崩します。偏側的な特殊な動きをするもの程、衝撃性の強いエキサイティングなもの程、体を壊します。肉体の健康を目的とするのであれば、過度なスポーツは避けた方が良いとお話をしてきました。
ただし、ストレス発散を目的にしているのであれば、「精神的健康」を得られるスポーツは、非常に有効なストレス解消法といえます。関節や筋肉に負担をかけたかな、と思った後は、歩行と冷却をよく行って下さい。