地球の重力と人のつながり
構造医学 という言葉もなじみが薄く、重力と医学がどうつながるのか?と、不思議に思われることでしょう。しかし近い将来新しい医学のベースになる考え方なので、なるべくわかりやすいようにご紹介したいと思います。
重力と医学のつながりをお話しする前に、現代医学の進歩と現状について考えてみます。
現代医学の進歩
感染症、外科手術、救急医療は目覚ましい進歩をとげてきました。その良きパ−トナ−は工学でした。昔は肉眼で人体の観察をしていました。しかし、工学が進歩して虫めがねや顕微鏡、電子顕微鏡やCT、MRIなどが登場すると、医学者達はそれを利用して人体を区分けし、次々と細部まで観察しました。そして病原菌や細胞の仕組み、遺伝子などの知識をたくさん得て、薬を開発し大きな成果を挙げてきたのです。体と病気に関する知識が増え文字通り進歩しているのであれば、治療はどんどん簡略化され、病気は次第に減るはずです。しかしその現状はどうでしょうか。
現代人を取り巻く環境が大きく変化してきた影響もあるのでしょうが、原因不明の病気や有病者数は増え続ける一方です。しかも、国の医療費は高騰して収拾がつかない状態になっています。
分け続けるとわからなくなる
病院は非常に多くの科に分かれています。これは現代医学をそのままあらわしています。一つの体を細かく分類し、観察して得た専門の知識は非常に貴重なものです。しかし今日ほど各科の研究が進んでしまうと、逆に生きている人の全体像が解らなくなってしまうのです。各科の研究が進むと、その科独自の「専門用語」がたくさんできて、他の科の医師には理解できなくなるからです。つまり研究が進むほど、一つの体はつながりのない複数のパーツ(科)に散らばってしまうのです。これが現代の医学であり、病院の姿なのです。
実は現代医学の諸問題は、この人体の細分化に端を発しているのです。たくさんの症状を持つ患者は、複数の科で出された多くの薬を合わせて飲みます。すると副作用だけでなく、医療によって複雑な病気がつくられること(医原病)や、膨大な医療費が生じるのは当然なことといえます。ですからパーツ(科)を束ねる考え方や、薬だけに頼らない全体的な治療が必要になってくるのです。
身体のパーツをまとめる「もの」は、人が誕生する歴史(起源)のなかに隠されています。
地球の重力と生命の誕生
私達の命のもとになる細胞は、34億年前に海のなかで誕生しました。地上の海水や空気は、目に見えない地球の重力によってつなぎとめられています。地表の窪みに水が溜まると海や湖ができます。重たい海水が南極に集中したり、軽い空気が宇宙に放散しないのは、重力が海水や空気など、全てのものを地球側に均等に引き寄せているからです。このことからも、重力は非常に大きなエネルギーをもっていることがわかります。この莫大なエネルギーは、たくわえられると物質に変化するのです。( E=mc2 アインシュタインが発表したエネルギーと質量の関係式 )
地球誕生のころ、水と空気が、重力、太陽熱、マグマ、雷などのエネルギーと複雑に絡み合い、幾つかの物質が混じる海ができました。さらに海の物質にエネルギーが注入されて、34億年前の地球の海にアミノ酸が生まれ、RNAやDNAなどの遺伝物質が生じ、小さな生命が誕生したのです。
こうして原始の生命は地球の重力が創りだした海の中で、重力のエネルギーを受けて誕生しました。
重力が生命を進化させた
生命は単細胞から多細胞へ、そして魚類へと進化します。やがて動物は重力に押しつぶされない丈夫な骨格を備え、海から陸へ、つまり、魚類から両生類やハ虫類やほ乳類、霊長類や人類へと進化して、それぞれの生活環境に適した姿をつくってきました。人の直立二足歩行と特殊な内臓の配置も、実は重力に順応してできたものなのです。
このように重力は、生命と人をつくったリーダー的な存在です。だから、重力は人の体の学問である医学と直結するのです。
構造医学は、私たちの生まれた地球がもつ重力と、人の骨格と内臓のつながり、病気とタンパク質と熱の研究などを重ねてきました。そして従来の医学に物理学と自然人類学の視点を与えることで、秩序ある人体観と新しい病理像を構築しています。同時に構造医学は、重力線を基にする身体に害のない診断法と、侵襲の少ない治療法を確立し、多くの診療成果を挙げてきました。