五十肩(肩関節周囲炎)
「五十肩」には二種類あります。症状と原因はそれぞれ違うので、治療と経過もおのずと違ってきます。
炎症を温める?
五十肩は、50歳前後の人に起こる、肩関節の疾患です。主な症状は、肩関節の動きの制限と痛みです。
整形外科学では、五十肩は「老化」による肩関節の炎症だとされています。基本的な治療は、温熱療法消炎鎮痛薬、運動療法などです。それでもよくならないときは、ステロイドや神経麻酔薬を注射するようです。
一般的に「五十肩の痛みは炎症だから温めるとよい。」と言われます。しかし考えてみて下さい。ふつう、炎症に熱は加えません。炎症ならば冷やして熱を取るはずです。
構造医学の考え方
安易に「年のせい」にしないで、発症のルートを考えなければなりません。私達はもともと四足で移動していた歴史があるので、股関節と肩関節は後ろ足と前足という、移動肢としての密接な関係があります。人が歩く時は、頭や背骨が安定するように「右足と左腕」「左足と右腕」が、たすきがけの組み合わせとなって前後に同じ動きをします。したがって、一方の股関節の動きが悪くなると、連動する反対側の肩関節の動きが悪くなって炎症を起こすのです。このパターンで発症していれば、「普通の五十肩」です。
「普通の五十肩」への治療法ですが、股関節の動きは骨盤が歪んでいると悪化します。ですから、骨盤を治療して股関節と肩関節の連動を回復することが大切です。そして肩関節を氷のうで冷やし、炎症を消すようにすると消炎鎮痛作用が高まるので、五十肩は治ってきます。
重症の五十肩
五十肩には2種類あります。重症の五十肩の治療について紹介します。
重症の五十肩は、整形外科学的には「カルシウム沈着性肩関節炎」、別名「フローズン・ショルダー=凍結肩」とわれ、腕の骨と肩甲骨がカルシウムで一体化する疾患です 一般的には、温熱療法と運動療法を併用し、ステロイド等の鎮痛薬を処方します。
構造医学の考え方
重症の五十肩は、「過去の五十肩の反対側に発症する」ことがよくあり、動きの悪い股関節と同じ側に発生するタイプです。症状は、肩関節の強い運動制限と痛みに、腕のしびれを伴います。
首や肩が痛み、腕がしびれる疾患には、首の椎間板ヘルニア • 変形性頸椎症などがあり、「頚肩腕症」といわれます
重症の五十肩はこの仲間で、慢性的な首や肩の歪みや炎症による「頚肩腕症」と、「肩関節の変形」が合併したものなのです。したがってこの五十肩には、頚肩腕症の治療と肩関節の治療が必要になります。発症の経緯からみても、完治には少し時間がかかります。
この時、肩を温めると表面上の痛みは軽減しますが、関節内部には炎症の熱が慢性的に残ることになり、治癒を遅らせる結果になります。
構造医学は、自然の道理に従い、肩関節を氷のうで冷やし、炎症の熱を消すように指導します。
*肩関節の一体化は、肩の冷えによる「凍結」ではなく、慢性的な炎症によるものなので、「焼き付いた肩」と表現した方が適切だと思います。